化学品の市場調査、研究開発の支援、マーケット情報の出版

  ■ 発  刊:2023年3月31日
■ 定  価:55,000円(税込)
■ 体  裁:B5版 並製本 238頁
■ 発  行:R&D支援センター
   ISBN 978-4-905507-66-6

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著 者

鞠谷 雄士 東京工業大学 物質理工学院 特任教授
中田 賢一 中田西日本繊維技術士事務所 代表
永安 直人 一般社団法人日本繊維技術士センター 理事・東海支部長
齋藤 磯雄 一般社団法人日本繊維技術士センター 相談役
橋本 隆司 ハイケム㈱ 貿易本部 営業支援室 専門課長
増田 正人 東レ㈱ 繊維研究所 リサーチフェロー・研究主幹
八木 健吉 八木技術士事務所 一般社団法人日本繊維技術士センター 副理事長
撹上 将規 群馬大学 大学院理工学府 分子科学部門 助教
和田 直樹 金沢大学 理工研究域 助教
藤江 哲夫 金沢大学 理工研究域 特任助教
板谷 寛之 金沢大学 理工研究域 研究員
松島 得雄 草野作工㈱ 部長
髙橋 憲司 金沢大学 理工研究域 教授
梅村 俊和 ㈱プレジール 代表取締役 

発刊にあたって

 我が国の合成繊維産業が全盛期にあった1970年代から1990年代にかけて、我が国は世界の最先端繊維技術を競い合っていた。特に、1980年代には、衣料用繊維では高速紡糸技術、新しい紡糸技術や紡編織・繊維加工技術を駆使して開発した「新合繊」や「マイクロファイバー」等の高機能・高感性繊維、また産業資材用繊維では、マイカーブームと高速走行時代が要請した乗用車ラジアルタイヤ用HMLS(High Modulus Low shrinkage) -PET繊維とその製造のための高速紡糸延伸プロセス、ジャンボジェット機用N66超高強度繊維等、更に、炭素繊維をはじめとする高性能・高機能繊維(スーパー繊維)等の新技術が次々と開発され、世界の最先端で開発競争をしていることが実感できた。
 しかしながら、2000年以降は円高による国際競争力の低下、バブルの崩壊により長期間に渡って経済が停滞する中、繊維業界は懸命の快復努力もかかわらず縮小の一途をたどってきた。最近は、特に汎用繊維では生産規模、高効率な最新鋭設備、そして生産技術においても中国に圧倒されている。我が国の合成繊維事業は縮小を余儀なくされ、年間生産量は世界シェアの1%を切っている。そして、事業規模の縮小に伴って技術開発戦力も縮小したため、研究技術開発の対象も、新増設が盛んだった拡大期には新プロセス開発が重要であったが、最近は旧設備を使いこなしながら、知恵を絞って高付加価値新製品の開発に取り組んでいる。今後は、得意とする衣料用高機能・高感性繊維及び産業資材用高性能・高機能繊維に特化し、社会要請である健康・安全、環境負荷低減等の解決に貢献し、人生を楽しく暮らせるようなサービスを繊維製品を介して提供していくことが必要である。 
世界の繊維生産量は約1億㌧/年で、合成繊維が約7千万㌧/年を占めるが、うち溶融紡糸は、製造される繊維の実に約98%を占める最も重要な製造方法である。他は湿式紡糸のアクリル繊維が約145万㌧/年(約2%)、スーパー繊維が約23万㌧/年(約0.3%) である。スーパー繊維の多くは湿式紡糸をベースとして新たに開発された特殊紡糸法によって生産されているが、ポリアリレート、PPS(ポリフェニルスルフィド)、ポリエーテルイミド繊維等は溶融紡糸によって生産されている。溶融紡糸は、最もエネルギー消費量の少ない紡糸法であり、製造コストは最も有利で、かつ環境負荷の少ない製造法としてSDGs に貢献する。溶融紡糸は、デュポンのカロザスがナイロン66を発明して以来、最大生産量を誇るポリエステル等各種素材に展開され、新製品開発、品質改善、高生産性・高収率プロセス開発、等を追求した研究技術開発が継続されてきた。
 本書では、繊維系学科が縮小する中で、先人研究者の溶融紡糸研究成果を引継ぎ発展させてきた大学の先生方が溶融紡糸技術の理論的な解説と最新の溶融紡糸繊維の研究成果を執筆されている。また、溶融紡糸技術開発の最盛期に、研究および技術開発や生産現場を経験してきた技術者が、これまで公開されていなかった溶融紡糸及び装置技術等のノウハウを含めて執筆して貰っている。溶融紡糸の研究および技術開発の神髄を、次の世代に引き継ぐ最後の機会と捉え、ここに成書として発刊の機会を得たことは幸いである。

                  (一般社団法人)日本繊維技術士センター相談役 齋藤磯雄

本書の特徴

★ ポリエステル、ナイロン、スーパー繊維を中心に、製造方法、繊維の特徴及び用途を解説!
★ 教科書にない実践的な技術が学べます!

目 次

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第1章 溶融紡糸技術の基礎知識
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 1 はじめに
 2 装置構成
 3 特殊断面形状繊維の溶融紡糸
  3.1 直接溶融紡糸による極細繊維
  3.2 異形断面繊維
  3.3 複合紡糸による極細繊維及び異形断面繊維
 4 空気流を利用した溶融紡糸
 5 おわりに

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第2章 溶融紡糸の工業生産技術および生産管理の実践
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 1 工業生産の背景
  1.1 溶融紡糸工程の位置付け
   1.1.1 溶融紡糸工程の特記
   1.1.2 日本の長繊維メーカーについて
  1.2 生産設備の変遷
   1.2.1 合理化の歴史
   1.2.2 直紡化
   1.2.3 多エンド化
 2 設備の要素技術
  2.1 紡糸機の基本形
  2.2 核となる部品について
   2.2.1 乾燥機の必要性
   2.2.2 溶融装置
   2.2.3 吐出装置
   2.2.4 冷却装置
   2.2.5 引き取り装置
  2.3 補助装置や部品について
   2.3.1 主機に組み込まれる部品
   2.3.2 糸道にセットする補助部品
 3 生産管理について
  3.1 基本の紡糸条件の設定
   3.1.1 ローラー速度設定の考え方
   3.1.2 ローラー温度の設定
   3.1.3 基本条件表の例
  3.2 工程管理について
   3.2.1 主たる工程管理
   3.2.2 工程改善の実施
 4 品質管理について
  4.1 主要な品質測定項目
  4.2 測定器と測定法について
  4.3 毛羽ループとは
  4.4 染色異常と管理
   4.4.1 染斑と染着差
   4.4.2 PET糸の染色判定について
  4.5 U%管理について
   4.5.1 U%とは何か
   4.5.2 U%の測定の仕方
  4.6 品質や工程異常の原因究明について
 5 これからの紡糸工場
  5.1 今後の長繊維生産工場次世代設備
   5.1.1 POY設備の革新化
   5.1.2 FOY設備の革新化
  5.2 長繊維生産工場の自動化

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第3章 溶融紡糸技術の高性能・高機能化
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第1節 衣料用繊維の高機能・高感性繊維技術
 1 はじめに
 2 ポリマ素材
 3 溶融紡糸
 4 異形断面紡糸
 5 複合紡糸
 6 複合捲縮糸
 7 異収縮混繊糸
 8 マイクロファイバ複合糸
 9 ナノファイバ
 10 高発色繊維
  10.1 常圧可染糸
  10.2 カチオン可染糸
  10.3 ミクロクレータ繊維
  10.4 低屈折率ポリマ-被覆繊維
 11 杢調繊維(多色)
 12 シルキー光沢糸
 13 軽量・保温繊維
 14 吸水・速乾繊維
 15 吸放湿繊維
 16 制電性・導電性繊維
 17 撥水素材(ロータス効果)
 18 防透け・紫外線遮蔽素材
 19 抗菌・防臭素材
 20 プラスチック光ファイバ
第2節 産業資材用繊維の高性能化
 1 産業資材用繊維の歴史
 2 産業資材用繊維の特徴と主な用途
  2.1 産業資材用繊維の特徴
  2.2 産業資材用繊維の主な用途
  2.3 産業資材用繊維とSDGsとの関係
  2.4 産業資材用ポリエステル繊維
   2.4.1 製造方法
   2.4.2 産業資材用ポリエステル繊維の物性と主な用途
  2.5 産業資材用ポリアミド(ナイロン)繊維
   2.5.1 産業資材用ナイロン66(N66)繊維
   2.5.2 産業資材用ナイロン6(N6)繊維
  2.6 産業資材用繊維の高性能化技術
   2.6.1 産業資材用繊維の高性能化とその達成手段
   2.6.2 繊維微細構造の制御
   2.6.3 高強度化のための繊維構造制御
   2.6.4 汎用産業資材用繊維の高強度化
   2.6.5 汎用産業資材用繊維の高性能化(新技術・新製品)開発例
第3節 高性能・高機能繊維
 1 はじめに
 2 高性能・高機能繊維の事業環境
 3 高性能・高機能繊維の紡糸方式
 4 高性能(高強度・高弾性率)繊維の物性
 5 高性能(高強度・高弾性率)繊維各論
  5.1 分子鎖の柔軟なポリマからなる高強度・高弾性率繊維
  5.2 分子鎖の剛直なポリマからの高強度・高弾性率繊維
 6 高機能繊維
  6.1 難燃性繊維
  6.2 高機能(耐熱性・難燃性・耐薬品性)繊維
  6.3 高機能(耐熱性・難燃性・耐薬品性)繊維各論
第4節 溶融紡糸技術によるPLAの繊維化
 1 はじめに
 2 PLAの溶融紡糸
  2.1 紡糸方式について
  2.2 溶融紡糸の概略
  2.3 PLA樹脂
   2.3.1 光学純度
  2.4 溶融紡糸
   2.4.1 長繊維
   2.4.2 紡糸温度
   2.4.3 延伸
   2.4.4 短繊維
 3 おわりに
第5節 複合紡糸技術による高機能繊維素材の開発
 1 はじめに
 2 複合紡糸技術
 3 複合紡糸技術の高度化
  3.1 繊維断面形態の極限追求
  3.2 世界初となる繊維径150 nmの超極細ナノファイバー
  3.3 繊維断面に凹凸を有した異形断面ナノファイバー
 4 3成分複合紡糸による高機能繊維素材
  4.1 艶やかな光沢感と膨らみを併せ持つ新素材「Kinari(キナリ)」
  4.2 和紙のような風合いと機能性を両立した「Camifu(カミフ)」
  4.3 ポリエステル超極細捲縮テキスタイル「uts-fit」
 5 最後に
第6節 溶融紡糸法によるナノファイバーの製造と性能
 1 ナノファイバーの出現
 2 ナノファイバーの定義
 3 ナノファイバーの特有の性能
 4 ナノファイバーの製造方法
 5 海島型溶融紡糸法ナノファイバー
  5.1 高分子相互配列体方式の海島型複合紡糸法ナノファイバー
  5.2 海外の海島型複合紡糸法によるナノファイバー
  5.3 ポリマーブレンド方式の海島型溶融紡糸法によるナノファイバー
  5.4 高度な海島型複合紡糸法によるナノファイバー
   5.4.1 新海島割繊技術ナノファイバー「ナノフロント®」
   5.4.2 革新ナノファイバー技術「ナノデザイン®」
 6 メルトブロー法ナノファイバー
  6.1 メルトブロー不織布の基本技術
  6.2 ナノメルトブロー不織布
 7 今後の展望
第7節 超高分子量ポリエチレン溶融紡糸繊維の作製
 1 はじめに
 2 UHMW-PE溶融紡糸繊維の作製
 3 UHMW-PE溶融紡糸繊維の溶融延伸による高強度繊維の作製
  3.1 UHMW-PE溶融紡糸繊維の溶融延伸
  3.2 溶融延伸繊維の構造形成における溶融延伸条件の影響
 4 UHMW-PE含有溶融紡糸繊維の作製と二次延伸による高強度化
 5 おわりに
第8節 バクテリアセルロースナノファイバーで強化した酢酸セルロース繊維の溶融紡糸
 1 背景
 2 NFBCで強化した酢酸セルロース(CA)の溶融紡糸と高強度化
  2.1 NFBCゾルとCAの複合化
  2.2 NFBC/CA複合材の溶融紡糸における温度条件
  2.3 NFBC/CA複合糸の高強度化
   2.3.1 延伸効果
   2.3.2 アルカリ処理の効果
 3 まとめ
 4 謝辞
第9節 天然ガスから作る高機能・低コストの繊維、不織布の開発
 1 ポリアセタール(POM)繊維の基礎物性・結晶構造の解析
  1.1 POM繊維化の試み
  1.2 POM紡糸法の検討と繊維の基礎的物性
   1.2.1 POM繊維溶融紡糸法の検討
   1.2.2 POM単繊維およびコアシェル繊維の紡糸法
   1.2.3 POM繊維の引張強度
   1.2.4 紡糸メーカーにおけるPOM繊維の量産試作
   1.2.5 POM繊維のクリープ特性
   1.2.6 POM繊維の延伸法
   1.2.7 POMアロイ繊維の結晶観察
   1.2.8 POM不織布の製造
   1.2.9 POM繊維の安全性
 2 POM繊維の応用・用途開発
  2.1 衣料用途としての利用
   2.1.1 POM織布・不織布の抗菌性と抗ウィルス性
   2.1.2 POM繊維の染色性
   2.1.3 POM繊維の熱伝導性
  2.2 POM繊維と天然繊維ハイブリッド織物の開発
  2.3 POMアロイ繊維の生分解性
 3 結言