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~ 光硬化の新たな切り口 ~
表紙
 
                 ■ 発  刊:2012年10月31日
                 ■ 定  価:55,000 円(税込)
                 ■ 体  裁:B5判上製本 139頁
                 ■ 発  行:S&T出版
                   ISBN 978-4-905507-02-4

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著 者

  東京工業大学 名誉教授 市村 國宏 氏

[略 歴]
 1968年3月東京工業大学博士課程修了後、繊維高分子材料研究所で研究室長、研究企画官、研究部長を経て、1990年10月より2001年3月まで東京工業大学資源化学研究所教授。同年同学名誉教授。2001年より2004年3月まで東京理科大学総合研究所教授。2004年4月より2011年3月まで東邦大学理学部特任教授。専門は光機能化学、有機材料化学。

趣 旨

 UV硬化といわれる技術領域はあまりに広い。基盤技術として、その応用範囲は質、量ともに増加の一途である。その中で、ハイブリッドUV 硬化あるいはデュアルUV 硬化という言葉に触れることがある。本書はこれらを独自の視点から概観し、UV 硬化および材料のさらなる展開に資することを意図している。
 ハイブリッド型とデュアル型に焦点を絞ったUV 硬化について執筆する機会に際して、光エネルギーだけでなく熱エネルギーをも考慮に入れる技術とし、UV 硬化を見直すことを試みた。すなわち、ハイブリッド型は複数の光硬化から、また、デュアル型は光硬化と熱硬化から構成されると定義し、それぞれの典型例を取り上げた。筆者の専門分野の偏りもあって、本書では個々の応用については触れることなく、化学材料についての技術が主体となっている。
 UV 硬化という用語は一見すると簡明だが、実際には、ナノからメートルを越えるサイズからなるさまざまな応用に対応するゆえに、材料や硬化方式の全体像を把握することはとても難しい。しかも、UV 硬化は産業技術なので、これにかかわる研究者、技術者のほとんどは企業人である。そのため、企業研究者による情報発信には多種多様な媒体が使われる。それらの中で特定の情報に接するとき、何かのご縁、との思いを抱くのが正直なところである。学術誌に掲載される関連論文の数も増える一方であり、論文の中身を精査する持ち時間は極めて限定される。その中で、本書のテーマに合致する情報をもれなく収集することは極めて困難だということを告白せざるを得ない。
 ここでは、ハイブリッドUV 硬化は複数の光硬化から成り立つとし、デュアルUV 硬化は光と熱との組み合わせから成ると定義したうえで、目にとまった文献を分類整理することにした。したがって、第7 章と第8 章が本来の趣旨に沿っている。本書の前半はこの2 つの章の準備といった内容であり、2つの章の中で、たびたび引用される。一方、後半の3つの章は、筆者の個人的な関心がベースであり、あまりなじみがない分野かと思うが、デュアルUV 硬化の新しい試みだと位置づけられよう。そこにはUV 硬化技術に熱エネルギーをさりげなく取り込みたいという思いがある。UV 硬化とはいえ、硬化自体は熱的な化学反応を利用しているのだ、という認識があるからである。
 本書の執筆に際し、多数の著書、学術論文、技術報告あるいは講演集などを参考にさせていただいた。できるだけそれらを具体的に引用したいところだが、実際に、引用文献とさせていただいたのはごく一部にすぎない。本書をまとめるうえで参考にさせていただいた多数の文献の著者に敬意を表するとともに、貴重な図や表も含めて引用させていただいた文献の著者ならびに出版社の方々に心から感謝する。
 

 

目 次

目次一覧PDF
第1章 UV硬化―総論
  1.背景
  2.UV硬化の素過程
  3.UV硬化における材料と利用形態の相関
  4.UV硬化での課題
  5.ハイブリッド型とデュアル型の定義
  6.分類
  7.本書の狙い

第2章 UV硬化の基礎
  1.光の吸収
  2.紫外線可視吸収スペクトル
  3.光の吸収
  4.nπ*状態とππ*状態
  5.光酸発生反応
  6.増感反応

第3章 光酸発生反応とその利用
  1.酸の強さ
  2.光酸発生剤
  3.残存酸の影響
  4.長波長感光化

第4章 光塩基発生反応
  1.背景
  2.光塩基発生反応
  3.光塩基発生剤の応用と分類

第5章 ラジカル重合系UV硬化
  1.背景
  2.アクリル系光ラジカル重合における素過程
  3.光ラジカル重合開始剤
  4.ラジカル重合性モノマー
  5.オリゴマー
  6.チオール・エンラジカル重合系の素過程
  7.チオール・エンラジカル重合系のモノマー
  8.アクリル系とチオール・エン系の比較

第6章 カチオン光硬化およびアニオン光硬化系
  1.背景
  2.カチオン重合反応の素過程
  3.UVカチオン硬化における諸因子
  4.UVアニオン硬化材料

第7章 ハイブリッドUV硬化
  1.定義と用語
  2.アクリル系光ラジカル重合+アクリル系光ラジカル重合系
  3.アクリル系光ラジカル重合+チオール・エン光重合系
  4.アクリル系光ラジカル重合+光ラジカル架橋
  5.アクリレート光ラジカル重合系+光カチオン開環重合系
  6.光カチオン開環重合+光カチオンビニル重合
  7.光架橋+光ラジカル重合系
  8.その他のUVハイブリッド系
  9.まとめ

第8章 デュアルUV硬化
  1.背景
  2.デュアルUV硬化材料と化学増幅型フォトレジスト
  3.光ラジカル重合+熱ラジカル架橋系
  4.光ラジカル重合+酸触媒架橋反応
  5.デュアル型としてのアニオンUV 硬化
  6.光ラジカル重合+ウレタンおよびチオウレタン架橋系
  7.湿気を活用するデュアルUV 硬化
  8.熱硬化剤を配合したデュアルUV 硬化
  9.脱架橋ができるデュアルUV 硬化系
  10.まとめ

第9章 フロンタル光重合と自発的なUV硬化
  1.UV 硬化の特徴と制約
  2.影の部分のUV 硬化
  3.フロンタル重合
  4.光で駆動するフロンタル重合
  5.自発的カチオンUV 硬化―フロンタルデュアル光重合系
  6.まとめ

第10章 酸増殖反応を組み込むデュアル型光反応材料
  1.光で発生する酸分子の増殖
  2.自己触媒的な化学反応
  3.酸増殖反応と酸増殖剤
  4.ポリマー薄膜中での酸触媒反応のモニタリング
  5.ポリマー薄膜中での酸増殖反応挙動
  6.反応圏とは何か
  7.酸増殖型フォトレジスト
  8.酸増殖性高分子
  9.酸増殖反応とカチオンUV 硬化
  10.まとめ

第11章 塩基増殖反応とデュアルUV硬化
  1.背景
  2.塩基増殖反応および塩基増殖剤
  3.エポキシ樹脂のデュアル型アニオンUV 硬化
  4.塩基増殖性ポリマーの感光挙動
  5.まとめ